皆さま、こんにちは。私は今年の4月1日をもって、長年連れ添った喫煙習慣からの卒業を始めました。実に30年余りもの間、私の日常には常に煙草がありました。それは、まるで体の一部であるかのように、私の生活に深く根付いていたのです。
禁煙を始めてから3ヶ月以上が経過し、お陰様で今のところ順調に禁煙を継続できています。たかが3ヶ月とおっしゃる方も多いかと思います。しかしこれまでの人生で何度も禁煙に挑戦し、その度に挫折を繰り返してきた私にとって、この3ヶ月という期間は、まさに奇跡のような時間に感じられます。今日は、そんな私の禁煙体験談を、皆さまにお話ししたいと思います。もし、今、禁煙を考えている方や、過去に何度も失敗して諦めかけている方がいらっしゃいましたら、私の拙い経験が少しでもお役に立てれば幸いです。
禁煙の道のり:七転び八起きの挑戦
私が煙草を吸い始めたのは、まだ若かりし頃、友人の誘いがきっかけでした。それからというもの、喜びの時も、悲しみの時も、常に煙草が私の傍らにありました。しかし、加齢とともに健康への不安が募り、「このままではいけない」という思いが日増しに強くなっていきました。
これまで、私は様々な方法で禁煙に挑んできました。禁煙外来にも通い、専門家の指導のもと、禁煙補助薬の力を借りてみたり、禁煙ガムや禁煙パッチといった市販の補助具も試しました。最初の数日は順調に進むのですが、数週間もすると、まるで憑き物が取り憑いたかのように、強烈な喫煙欲求に襲われ、結局は元の木阿弥に戻ってしまう。そんなことを何度も繰り返してきました。その度に、自分自身の意志の弱さを責め、深く落ち込んだものです。
しかし、今回の禁煙は、これまでとは少し違います。実は、今回は特別なことは何もしていません。禁煙外来にも行かず、補助具も使っていません。ただ、「もう吸わない」と心に決めただけなのです。これが、逆に功を奏しているのかもしれません。これまでの経験から、「こうすれば禁煙できる」という固定観念を一度捨ててみた結果、肩の力が抜け、心に余裕が生まれたように感じています。
禁断症状との向き合い方:お酒の席での葛藤
禁煙生活において、最も手強い相手が禁断症状であることは、喫煙経験のある方ならよくご存知でしょう。特にお酒を飲むと吸いたくなるという欲求が強く、幾度となくその誘惑に負けてきました。お付き合いでお酒を飲む機会も少なくありません。会食の席で、周囲の方が煙草を吸い始めると、無意識のうちに手が伸びそうになる自分がいます。あの煙の匂いを嗅ぐと、頭の中で警報が鳴り響くようです。
しかし、今回は「ここで吸ってしまえば、今までの努力が水の泡になる」という強い思いが支えになっています。幸いなことに飲食店が全面禁煙のところが増えてきたことも追い風です。また、喫煙可能な場所では、意識的に席を外して深呼吸をしたり、冷たいお茶を飲んだりして、気持ちを落ち着かせるようにしています。
禁断症状は、波のように押し寄せては引いていくものです。大切なのは、その波に飲み込まれないことです。一瞬の気の迷いが、これまでの頑張りを無駄にしてしまう。そう自分に言い聞かせながら、日々、禁煙を継続しています。
禁煙して変わったこと:心身の変化と得られたもの
禁煙によって、私の心身には様々な良い変化が現れています。まず、最も顕著なのは、体調の変化です。朝目覚めた時の喉のイガイガ感がなくなり、呼吸がとても楽になりました。以前は階段を少し上っただけでも息切れしていたのですが、今ではそんなこともありません。また、食べ物の味がより一層美味しく感じられるようになりましたし、これまで気付かなかった花の香りや雨上がりの土の匂いなど、五感が研ぎ澄まされたように感じます。これは、喫煙によって鈍っていた感覚が、徐々に戻ってきた証拠なのでしょう。
精神的な変化も大きく、自分に対する自信が芽生えました。長年、禁煙に失敗し続けてきたことで、「自分は意志が弱い人間だ」と心のどこかで諦めていた部分があったのですが、今回の成功によって、「やればできる」という肯定的な気持ちが強くなりました。また、煙草に縛られていた時間や思考から解放されたことで、心の安定も得られたように思います。煙草を吸わないことで生じるストレスを心配していましたが、実際にはその逆で、煙草を探す手間や、吸えない場所でのイライラから解放されたことの方が、はるかに大きいのです。
そして、経済的なメリットも無視できません。毎日吸っていた煙草代を計算すると、かなりの金額になります。その浮いたお金を自分のために有意義に使えるようになりました。
禁煙継続の秘訣:心の持ち方と日々の工夫
今回の私の禁煙がなぜ続いているのか、と問われると、正直なところ明確な答えはありません。しかし、一つ言えるのは、「無理をしないこと」と「自分を責めないこと」を意識している点かもしれません。過去の失敗は、目標が高すぎたり、自分に厳しすぎたりしたからかもしれません。今回は、「もし吸ってしまっても、また今日から頑張ればいい」くらいの気持ちで臨んでいます。もちろん、できる限り吸いたくないという気持ちは変わりませんが、完璧主義を手放したことが、逆に気楽に続けられている要因ではないかと感じています。
また、小さな成功を積み重ねることも大切です。例えば、お酒を飲んでいても吸わずにいられた日や、一本も吸わずに一日を終えられた日には、自分自身を褒めてあげるようにしています。「今日もよく頑張ったね」と心の中でつぶやくことで、次の日も頑張ろうという気持ちが湧いてきます。
そして、日々の感謝の気持ちを忘れないことも、心の平穏につながっています。朝、目覚めることができ、健康な体で日々を過ごせること。家族が笑顔でいてくれること。これら当たり前だと思いがちなことにも感謝することで、喫煙への欲求から意識が逸れることもあります。仏様の教えにもあるように、執着を手放し、今ある幸せに目を向けることが、禁煙という困難な道のりを乗り越える上での大きな助けになっているのかもしれません。
おわりに:禁煙は新たな始まり
私の禁煙体験談を最後までお読みいただき、ありがとうございます。30年という長い喫煙歴から解放された今、私は新たな人生のスタートラインに立っているような清々しい気持ちでいっぱいです。煙草を吸わない生活は、私にとって当たり前ではなかったけれど、これからはこの新たな「当たり前」を大切に育んでいきたいと思っています。
もし今、禁煙に一歩踏み出せずにいる方や、過去の失敗から立ち直れないでいる方がいらっしゃいましたら、どうかご自身を責めないでください。禁煙は、一度や二度で成功するものではないかもしれません。しかし、諦めずに挑戦し続けること、そして何よりも「健康になりたい」「大切な人のために」という強い思いがあれば、きっと道は開かれるはずです。
今回の私の経験が、誰かの禁煙成功のきっかけとなり、より健康的で豊かな人生を送るための一助となれば、住職としてこれほど嬉しいことはありません。皆さまの毎日が、心穏やかで、健やかなものでありますよう、心よりお祈り申し上げます。


