「故人を偲ぶのが辛い」と感じるあなたへ。住職が語る、心が安らぐ思い出との向き合い方

手を合わせる 心のヒント
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この文章を読んでくださっているあなたは、きっと、大切な方を亡くされ、深い悲しみの中にいらっしゃるのかもしれません。

ふとした瞬間に込み上げてくる故人への想い。温かい思い出が心を慰めてくれる時もあれば、どうしようもない寂しさが胸を締め付け、故人を思うこと自体が辛いと感じる日もあることでしょう。そのお気持ち、痛いほどお察しいたします。

忘れたいわけではない。けれど、思い出すと苦しい。そのように揺れ動く心とどう向き合えばよいのか。 この記事が、あなたの心を少しでも軽くし、故人様との新たな関係を築くための一助となれば幸いです。

第一章:故人を「偲ぶ」とは、どういうことでしょうか

私たちは、大切な方が亡くなった後、「故人を偲ぶ」という言葉をよく使います。しかし、この「偲ぶ」という行いの本質は、単に悲しみに暮れたり、思い出に浸って感傷的になったりすることとは少し違う、と私は考えております。

仏教では、亡くなった方は肉体を離れても、その魂や想いは私たちの心の中に生き続けるとされています。故人を偲ぶとは、その心の中にいる故人と静かに対話をし、繋がりを再確認する、とても大切な時間なのです。

それは、一方的に過去を懐かしむことではありません。故人様だったら今の私を見て何と言うだろうか、どう励ましてくれるだろうか。そう想いを馳せることで、故人様から教えや励ましをいただき、自分自身の生き方を見つめ直すきっかけにもなります。

つまり、故人を偲ぶ行いは、故人のためだけではなく、遺された私たち自身が心を整え、前を向くための「心の供養くよう」でもあるのです。

第二章:心が安らぐ、故人の偲び方【住職が実践する5つの方法】

「そうは言っても、どうすれば穏やかな気持ちで故人を偲べるのだろう」と感じる方もいらっしゃるでしょう。特別な作法は必要ありません。ここでは、私自身が日々の暮らしの中で行っている、心が安らぐ故人の偲び方を五つ、ご紹介させていただきます。

  1. 静かな場所で思い出に浸る
    無理に忘れようとしたり、気を紛らわしたりする必要はありません。一日のうちのほんの数分でよいのです。お仏壇の前や、静かな自室で目を閉じ、心の中で故人様に語りかけてみてください。「今日はこんなことがあったよ」という報告でも、「会いたいな」という素直な気持ちでも構いません。誰にも邪魔されない、故人様とあなただけの対話の時間を持つことで、心が少しずつ落ち着いていくのを感じられるはずです。
  2. 故人が好きだったものを共に味わう
    故人様が好きだったお食事を作ってご家族でいただいたり、愛聴していた音楽を聴いたりするのも、素晴らしい供養です。私の父は甘いものが好きでしたので、月命日にはきまって、父が好きだったお饅頭まんじゅうをお供えし、家族でいただきます。味や香り、音といった五感を通じて故人を思い出すと、まるで今も隣で微笑んでくれているような、温かい気持ちになれるのです。
  3. 写真や遺品にそっと触れる
    写真や、故人様が大切にされていた万年筆、愛用していた湯呑みなど、遺品にはたくさんの思い出が宿っています。それらをただ眺めるだけでなく、そっと手で触れてみてください。モノが持つ記憶や温もりが、あなたの心に直接語りかけてくるような感覚を覚えることでしょう。楽しかった日の記憶がよみがえり、悲しみでこわばっていた心が、ふっと和らぐ瞬間があるはずです。
  4. 故人へ手紙を書く
    声に出して語りかけるのが難しい時は、手紙を書くことをお勧めします。今の気持ち、感謝の言葉、報告したいこと、あるいは、生前には伝えられなかった後悔や謝罪の気持ちでも構いません。誰に見せるわけでもありませんから、ありのままの想いを綴ってみてください。言葉にすることで、自分でも気づかなかった感情が整理され、心のおりが少しずつ晴れていくのを感じられるでしょう。これは「グリーフケア」の手法としても知られています。
  5. ゆかりの地を訪れる
    故人様とよく散歩した公園、一緒にお茶を飲んだ喫茶店、好きだった景色が見える場所。そのような、ゆかりの地を訪れてみるのもよいでしょう。思い出の場所に身を置くと、当時の会話や笑い声が聞こえてくるようです。そこには悲しみだけでなく、たくさんの楽しい記憶が満ちています。その温かい記憶が、今のあなたをきっと力づけてくれるはずです。

第三章:「偲ぶ」ことから生まれる、私たちが明日へ向かう力

故人を偲ぶ時間は、決して悲しみや寂しさを再生産するためだけのものではありません。むしろ、私たちが明日へ向かって歩み出すための「生きる力」をいただくための、尊い儀式なのだと私は思います。

故人様があなたに残してくれたものは、悲しみだけではないはずです。たくさんの愛情、大切な教え、そして数えきれないほどの楽しい思い出。それらを思い出し、「ありがとう」と心から感謝すること。その感謝の気持ちこそが、故人様への何よりの供養となり、同時に、あなたの凍えた心を温める灯火ともしびとなるのです。

故人様は、あなたがご自身の人生を悲しみの色で塗りつぶしてしまうことを望んではいないでしょう。故人様との思い出を胸に抱きながら、あなたがあなた自身の人生を、笑顔で、力強く歩んでいくこと。それこそが、故人様が一番喜んでくれることではないでしょうか。

故人を偲ぶことで、私たちは一人ではないこと、常に見守られていることを実感します。その安心感が、私たちの背中をそっと押し、次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのです。

まとめ

大切な方を亡くした悲しみは、すぐには消えません。故人を偲び、涙が流れる日があって当然です。どうかご自身を責めないでください。

しかし、故人を思う時間は、辛いだけの時間ではありません。それは、故人様との絆を確かめ、感謝を伝え、明日を生きる力をいただく、あなたにとってかけがえのない時間です。

今回ご紹介した方法が、すべての方に合うとは限りません。焦らず、ご自身のペースで、あなたらしい形で、故人様との対話を続けてみてください。

故人様との思い出は、決してあなたを縛る重荷ではなく、あなたの人生を豊かに彩る宝物です。その温かい絆は、これからもあなたの心の中で、永遠に生き続けるのですから。 あなたの歩むこれからの日々を、故人様はきっと、穏やかな眼差まなざしで見守ってくださることでしょう。

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