時代の移ろいと供養の形。樹木葬という「自然に還る」選択肢

樹木葬 納骨
この記事は約6分で読めます。
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

お寺という仕事柄、人の一生のしまい方について考える機会が多くございます。昨今は、供養やお墓に対する考え方が本当に多様になりました。家のお墓を代々守っていくという形もあれば、また違った形を模索される方も増えています。

その中でも、近年よく耳にするのが「樹木葬」という言葉ではないでしょうか。「自然に還りたい」という、どこか根源的な人の想いに寄り添うこの供養の形について、本日は少しばかりお話させていただこうと思います。

まずはご家族とよくお話しを

樹木葬などを検討され、ご相談を承るときに、まず私が皆様に「よくご家族とお話しになりましたか?」と聞かせて頂きます。子どもに迷惑を掛けないと思うあまりに、ご自分達だけで墓じまいからの樹木葬を検討、決めようとしていらっしゃる方が実は多くあるからです。

私の「よくご家族とお話しされてくださいね」という言葉から、遠方にお住まいのお子様に相談されたところ、「お墓はこのまま維持してほしいし、田舎にお墓を見てくれる人が誰もいなくなったら、自分の住まいの方に移転して護っていくつもり」とのことで、親の取り越し苦労であったとお聞きしました。

ご心配はごもっともですが、まずはご家族とよく話し合いになってください。一般墓以外の選択肢の場合、多くは取り返しがつきませんし、なんとかなるにしても金銭の無駄になります。

1. 樹木葬とは、どのような供養の方法か

樹木葬とは、その名の通り、墓石の代わりに樹木を墓標ぼひょうとして故人を弔う埋葬方法です。桜やハナミズキ、モミジといった木々のふもとに眠る、と聞くと、その穏やかな情景に心惹かれる方も少なくないでしょう。

しかし、私が思うに樹木葬の本質は、単に墓石を木に置き換えた、というだけではありません。それは、「個」として完結するのではなく、自らの身体が土に還り、新たな命を育む大きな自然の循環の一部となる、という世界観にあるように感じます。死を終わりではなく、次の世代へ命を繋ぐ自然の摂理の一部と捉える、非常に東洋的な思想が根底に流れているのかもしれません。

2. 心惹かれる方が多い「樹木葬の魅力」

ご門徒様からも樹木葬について尋ねられることが増えましたが、皆さまが口にされる魅力には、いくつかの共通点があるようです。

一、自然への回帰という願い

「最後はコンクリートの中ではなく、土の温かさを感じられる場所で眠りたい」という声は、本当によくお聞きします。緑豊かな木々に見守られ、鳥のさえずりや風の音を聞きながら安らかに眠る。そんなイメージは、都会の喧騒から離れたいと願う現代人の心に、深く響くのでしょう。四季の移ろいと共にその表情を変える木々が、残されたご家族の心を慰めてくれるという側面もございます。

二、金銭的な負担の軽減

現実的な問題として、費用面でのメリットは大きいようです。伝統的なお墓を新たに建立する場合、墓石代や工事費などでまとまった費用が必要となります。その点、樹木葬は墓石を用いないため、比較的費用を抑えられる傾向にあります。もちろん、埋葬の方法や場所によって金額は様々ですが、選択肢が広がるのは良いことでしょう。

三、継承者への配慮と自由さ

「子どもたちに墓守の負担をかけたくない」という親心も、樹木葬が選ばれる大きな理由です。多くの樹木葬墓地では、霊園が責任をもって永代にわたり管理・供養をしてくれる「永代供養」が付いています。これにより、お墓の継承者がいなくても無縁仏になる心配がありません。また、宗教や宗派を問わない施設が多いのも、現代の多様な生き方に合っている点と言えます。

3. 選ぶ前に知っておきたい「樹木葬の留意点」

一方で、ものごとには必ず光と影があるように、樹木葬を選ぶ前には知っておくべき点もございます。

一、お参りの利便性について

自然豊かな環境を魅力とする反面、多くの樹木葬墓地は都市部から離れた郊外にあります。ご自身が生前に契約される際は良くても、残されたご家族が定期的にお参りに通える距離かどうかは、よくよく考える必要があります。今は車があっても、将来的に運転が難しくなるかもしれません。公共交通機関でのアクセスなども含めて、ご家族と話し合っておくことが大切です。

二、ご遺骨の扱いについて

樹木葬には、ご遺骨の埋葬方法にいくつかの種類があります。

合祀ごうし:骨壺からご遺骨を取り出し、他の方々と一緒に埋葬する方法。
集合型:一つのシンボルツリーの下、他の方と区画は分かちつつ埋葬する方法。
個別型:一家族、または個人ごとに一本の木が割り当てられる方法。特に合祀ごうし型の場合、一度埋葬すると他の方のご遺骨と混ざるため、後から特定のご遺骨だけを取り出すこと(改葬)はできません。

どの方法が良いというわけではありませんが、この違いを理解しないまま契約すると、後々ご家族が困惑される可能性があります。

三、自然であるがゆえの、より現実的な「喪失」のリスク

たしかに、御影石みかげいしなどで作られた墓石とて、数百年という時を経れば風化し、やがては朽ちていくものです。永遠ではございません。しかし、樹木が墓標である場合、そのリスクは墓石よりもずっと身近で、切実な問題として捉えるべきです。樹木は命あるものですから、霊園の管理体制が杜撰ずさんであったり、気候の変動や予期せぬ病害虫びょうがいちゅうの発生によっては、植えられたシンボルツリーがわずか数年、数十年で弱り、枯れてしまうという現実は、決してまれなことではないのです。美しいパンフレットに描かれた立派な樹木も、未来永劫その姿を保つ保証はどこにもありません。「枯れたらまた植えれば良い」と簡単に考えがちですが、その際の費用負担はどうなるのか、そもそも植え替えの保証はあるのか。契約時にそこまで細かく確認される方は多くないのが実情です。お参りの度に木が弱っていく姿を見るのは、残されたご家族にとってどれほど辛いことでしょうか。石のような不変性がないからこその魅力ですが、その裏側にある「墓標そのものが失われる可能性」については、他の留意点以上に強く意識していただきたい重要な点です。

4. 後悔のない選択のために大切にしてほしいこと

もし樹木葬を真剣に検討されるのでしたら、ぜひ以下の三つのことを心に留めておいてください。

  1. ご家族との対話 ご自身の希望はもちろん大切ですが、お墓は残された方々が故人を偲ぶための場所でもあります。なぜ樹木葬を選びたいのか、その想いを伝え、お参りの方法なども含めて、ご家族が納得できる形を見つけることが何より重要です。
  2. 現地を訪れ、空気を感じること パンフレットやウェブサイトだけでは分からない、その場の空気や雰囲気というものがあります。晴れた日、雨の日、季節を変えて何度か足を運んでみるのも良いでしょう。管理が行き届いているか、休憩する場所はあるかなど、ご自身の目で確かめることで、心から安らげる場所かどうかが見えてきます。
  3. 契約内容の細やかな確認 費用には何が含まれ、追加でかかる費用はないのか。管理費はいつまで必要なのか。永代供養の範囲はどこまでか。そして、万が一樹木が枯れた場合の対応はどうなるのか。細かい点までしっかりと確認し、疑問点は遠慮なく質問しましょう。大切な最後の棲家すみかとなる場所ですから、慎重すぎるということはありません。

まとめ

樹木葬は、現代人の心に寄り添う、非常に魅力的な供養の選択肢の一つです。しかし、どんなに素晴らしいものでも、それが全ての人にとっての最善解とは限りません。

供養において最も大切なのは、形や方法ではなく、故人を想い、ご先祖様に感謝するその「心」です。樹木葬という選択肢を知ることをきっかけに、ご自身の、そしてご家族の「これから」について、ゆっくりと考えてみる時間を持たれてはいかがでしょうか。その対話の時間こそが、何より尊い供養になるのかもしれません。

タイトルとURLをコピーしました