私が住職であると自己紹介をしますと、しばしば尋ねられることがあります。
「お寺って、実際のところ儲かっているのですか?」
「お布施って、全部お坊さんのものになるんでしょう?」
こういったご質問をいただくたび、世間一般に広がるお寺のイメージと、私たちのリアルな暮らしとの間には、大きな隔たりがあるのだなと実感いたします。決して皆様を責めているわけではありません。むしろ、そのように見えてしまうくらい、私たちお寺側の情報発信が足りていなかったのだと反省しております。
そこで本日は、少し勇気を出して、お寺の「台所事情」についてお話ししてみようと思います。皆さまが心を込めてお供えくださるお布施が、一体どのように使われているのか。住職という立場から、包み隠さず、誠実にお伝えいたします。この記事を読み終える頃には、お寺を見る目が少し変わっているかもしれません。
結論から先に:お布施の大半は「お寺の維持管理費」です
いきなり核心からお話ししますが、皆さまからお預かりするお布施の大半は、住職個人の懐に入るわけではありません。その大部分は、お寺という場所を維持し、管理していくための費用に充てられています。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 建物の維持・修繕費(本堂、庫裏、山門など)
- 境内の管理費(庭木の剪定、除草、清掃など)
- 仏具・法衣の購入、修繕費
- 水道光熱費、通信費
- 火災保険や賠償責任保険などの保険料
- 各種賦課金(宗派への上納金など)
特に建物の維持費は、皆さまが想像される以上にかかるのが実情です。例えば、本堂の屋根。茅葺や銅板葺きなど、伝統的な工法で造られている場合、数十年という長い周期ではありますが、一度の葺き替えに数千万円という費用が必要になることも珍しくありません。また、荘厳な欄間の修復や、襖絵の表装など、文化財としての価値を保つための費用も必要です。
これらは決して贅沢ではなく、ご先祖様から受け継いできた大切なお寺を、次の世代へと確実に引き継いでいくために不可欠な経費なのです。
意外と知らない、お寺と「税金」の真実
「お寺や神社は税金がかからないから良いよね」 これもまた、よく耳にする言葉です。確かに、宗教法人法で定められた宗教活動から得られる収入、つまり皆さまからのお布施や賽銭などには、法人税は課せられません。これは、宗教活動が公益性を持つと認められているためです。
しかし、これは「お寺の運営が全て非課税」ということではありません。 例えば、お寺が所有する土地を駐車場として貸し出したり、不動産を賃貸したりして収益を得た場合、それは「収益事業」と見なされ、一般の企業と同じように法人税が課せられます。
そして、ここが最も誤解されがちな点ですが、住職個人には、当然ながら税金がかかります。 お寺は法人であり、住職はその法人から給与をいただいて生活しています。この「給与」は個人の所得ですから、皆さまと全く同じように所得税や住民税を納めているのです。「お坊さんだから税金ゼロ」などということは、決してありません。
【ここからが本当の話】住職の「お給料」、そしてお寺の未来を支えるお金の話
ここまで、お布施が主にお寺の「維持費」に充てられること、そしてお寺や住職にも「税金」がかかることをお話しいたしました。これは、いわばお寺の会計の基本的な部分です。
しかし、これだけでは語り尽くせない、もっと生々しく、そしてより切実な台所事情が存在します。お寺を支え、未来へと繋いでいくために、本当に大切なお金の話は、ここから先にあります。
普段なかなかお話しする機会のない、以下のテーマについて深く掘り下げていきます。
- 住職の「給料」は誰がどうやって決めるのか?そのリアルな金額とは。
- 私たちも同じです。子どもの教育費や自身の老後の不安との葛藤。
- 次世代へお寺を繋ぐために必要な「未来への投資」の驚くべき正体。
- 皆さまからいただくお布施の金額について、住職が心の内で本当に感じていること。
これは決して、面白半分の暴露話ではありません。お寺という存在を、真心から支えてくださっている皆さまにこそ知っていただきたい、私たちの偽らざる現実であり、未来への願いです。もしよろしければ、もう少しだけ、私たちのお話にお付き合いください。


